「それって指導者も子供たちも何を目的に、何が楽しくてやってるの?」…うちのような組織は、この言葉を一年のうちで何度も聞かれる。
賞状やメダル、全国大会みたいな勲章は目指さないの?
大会で勝つ事が一番楽しいんじゃないの?
そこだけを切り取ると、うちに楽しさと魅力を感じる人はあまりいないかもしれない。
確かにうちのような組織はそうない。
全国的に見ても、似たような感じのところは数えるほどしかない。
連盟に加入しているクラブチームでもない。
倉庫などで時間制を組みながらやる野球スクールや野球教室でもない。
学校の部活動とも違う。
何にも属さない独立したチームがうちになる。
私の歩んできた野球経験、野球から離れた社会経験、指導者になるために勉強した野球界、そこから考えて小・中学生に一番必要だと思う事を形にしたのが今の組織。
それでもまだ理想や目標の形までには達していない。
大会で勝つ事だって大事だと思う。
試合に出れる選手もいれば出れない選手もいるのは当たり前だと思う。
全国大会を目指してやる事だって良い事だと思っている。
でも私の中では、小・中学生にはそれが一番ではない。
高校に行けば「甲子園」という存在がある以上、そこに向かって行かなくてはいけない世界になる。
3月〜11月いっぱいまでの土日祝日は、ほぼ試合になる。
最近は平日でも、授業後にナイターで試合をやる時もある。
小さい頃から試合ばかりでなくても、嫌でも甲子園に向かって競争や試合試合の日々が来る。
平日授業後の練習だって、自分の技術向上のための練習はなかなかできない。
手取り足取り指導があるわけでもない。
レギュラー9人はほぼ決まっている中で、レギュラーを目指す事はかなりの壁になる。
高校に行ってから自分を何とかしようと思っても、どうしたらいいか分からないと思っている間に高校野球は終わってしまう。
そんな高校野球を経験し、技術的にもモチベーション的にもまだ上を見ている選手がその次のステージへと進んでいく。
そう考えると、いつしっかり練習をして、技術的にも内面的もしっかり育成していくのはいつなのか….と考えたら、私は小・中学生しかないと思っている。
小・中学生の間は基礎基本や練習を大切にすべき。
繰り返し繰り返し反復練習を積み重ねて、コツコツ自分のものにしていく事で、高校から戦う準備をしていく。
試合も自分たちで考え、自分たちで組み立てて、チームとしても個人としても成長していく時間にする事を大事に考えている。
指導者が支配する野球ではいけない。
支配された反動で、内面的な成長が未熟になり、野球はうまくても、人間的にはどうなのか…と感じる選手もたくさんいる。
ここ数年の野球界で起きる事件・問題もその支配からの反動が大きいと思う。
逆に変われない指導者・大人も多い。
大人が起こす問題も後を絶たない。
だから私は自分が歩んだ道が正しいとは思わず、当たり前のように進んで行かなくてはいけない野球界を当たり前だとは思わず、自分の中で大切だと思う事を形にしていきたい。
高校から声がかかったと言う人はたくさんいるが、本当に高校から必要とされて行く選手は少ないという現実。
やはり本当に必要とされて行けるように育てたい。
何が楽しくてやってるの?
勝つ事以外に目的や目標はあるの?
野球で高校に進学できるの?
そう聞かれると、昔は分かって欲しくて一生懸命説明していたが、今は説明もしない。
言いたい人には言わせておく。
笑いたい人には笑わせておく。
分かる人はたくさんの説明をしなくても分かる。
分からない人はどれだけ説明をしても分からない。
分かってくれる人を大切にすれば良い。
内面的に成長できるよう、子供たちに色々な引き出しで向き合って、技術的に成長できるよう、地味な練習や考える試合を繰り返していく。
すぐに全ての結果には結びつかない。
難しい事であり、我慢や辛抱も大事。
その時間を経て、少しずつ少しずつ変化していく子供たちを見守る事が最高に楽しい。
分からない人も多いかもしれないが、組織の形に正解も不正解もない。
私は私の目指す組織と考え方で子供たちを育てていきたい。