今年も道場から高校へ旅立つ選手達がいる。
みんな今からが本当の勝負。苦しさも悔しさも楽しさも、全て経験できる高校野球の3年間。
みんなの成長を私は楽しみにしている。
その中に、ある1人の選手がいる。
彼は、3月31日、ギリギリまで道場で私と練習をしてくれた。
まもなく静岡の高校へ旅立つ。
元々彼は有名なクラブチームにいた。
腰のケガや指導に恵まれず、思うような野球人生が送れていなかった時に私と出会った。
有名なチーム・強豪チームにいると、天狗になったり、自分の未熟さを自分で認められないプライドがあったり、
上からしか人を見れない目線があったり、野球の技術より先に、意識改革をやっていかなくてはいけない選手が多い。
しかし、彼は驚くほど謙虚で素直だった。
ただ、目つきや口から出てくる感情からは「諦めや失望」そんな言葉が私には伝わってきた。
このままで野球人生を終わらせてはいけない…彼を必要とする高校は必ずある…
私と出会った以上、絶対に損はさせない…そう自分自身に言い聞かせ、彼に尽くそうと誓った日を今でも覚えている。
腰のケガは辛いもの、再発や不安との戦いもある。
でも、練習に練習を重ねて、基礎・基本を叩き込まないといけない…モチベーションを保つのも大変だったと思う。
ハードなシーズン中の練習、地獄の冬練習を乗り越えて、ひと回りふた回り成長した彼の姿が今はある。
そして、高校から必要とされる選手になり、期待されて旅立って行く。
彼が道場に残してくれたものはたくさんある。
人への優しさ、後輩への温かい対応、感情的にならない冷静さ、素直さ、謙虚さ。
野球の世界だけでなく、大人になって社会に出ても絶対に必要な考え方や人間性だと思う。
野球選手としても素晴らしい能力を持っているが、その前に、彼は人として素晴らしい人間である。
彼のおかげで、後輩達もみんな優しい。
彼を道場に連れて来てくれたご両親に感謝、彼と出会えたことが私の人生にもプラスになった。
これからが楽しみですごく期待している。
でも、すごくすごく寂しい…。
私と一緒に野球をしてくれて本当にありがとう。