道場を立ち上げて10年以上が経つ。
今、道場で頑張っている子供達、温かく見守ってくださる父兄のみなさん、そして卒団しても大事なOB達、全てのみなさんに感謝している。
ここまでの道場の歩みは決して順調ではなく、スタートから辛い日々が続いた。
元々道場は、自分の育成へのこだわりを形にしたもの。
小・中学生は勝ち負けより育てる事。
賞状やメダルが欲しいわけではなく、先々必要な技術や考え方を養っていく場所にしたい。
どうせ高校からは「甲子園」というものがある以上、勝ち負けの世界になる。
私も高校野球からは、勝ち負けでしかなかった。
だからこそ、小・中学生の間は、高校以上の世界で戦っていける土台を作る事が大事だと思っている。
その考え方からすると、クラブチームや野球塾ではなく、こだわった他にはない独立した団体を自分で立ち上げるしかなかった。
立ち上げる前から、野球界を知る友人・知人からは「独立団体を作るなんて無理な事はやめた方がいい」「閉鎖的な野球界だから、新しいものは潰される」「元プロ野球選手とか肩書きのない人間がやっても人は集まらない」…他にも色々言われたが、こだわりは捨てられなかった。
有名な肩書きもなく、クラブチームのような形でないと指導はできない事が事実ならば、野球界からは離れようと決めていた。
ただ、こだわりを持って一度チャレンジしてからでないと納得する事はできない。
やる前から怖がったり諦めるの好きではない。
しかし、明るい未来を夢見て立ち上げたが、忠告通り、本当に厳しい世界だった…。
最初は友人の息子で小学3年生の子1人だった。
その彼のお友達が1人加わり、私とその2人の子供達と3人で練習をしていた。
一生懸命指導していた、2人の子供達も一生懸命頑張っていた。でも、笑われる事も多々あった。
バカにされた事もあった。
HPなどを見て、チーム関係の人達から嫌がらせの電話やメールもたくさん来た。
「ぶっ潰してやる」「野球界を舐めるな」「絶対うまくなんかいかない」…まだまだ山ほどあった。
正直、予想以上に厳しく、何度も心が折れそうになった記憶がある。
ただ ただ、こだわりを捨てたくなくて、自分の経験と勉強で一生懸命子供達を育てたいだけなのに、何でここまで批判されないといけないのか…
指導も見ていない、私と話もしていない人達が、何でここまで酷評できるのか…と思ったが、ここが野球界の裏側、閉鎖的な世界と言われている部分だと思う。
悩みや不安ばかりを考える時期も最初はあったが、毎日私を信じて一生懸命練習に来る子供達と向き合うと、酷評されてもいい、必ず彼らがその先で結果を出していく…そのために大切に育てようと誓っていた。
その時の経験や、彼らとの出会いから歩みが、今の道場のしっかりした土台になっている。
私は過去に酷評された事を子供達に話す事はまずない。悔しい思いや見返したい思いはあっても、悪口を言ったりやり返したいとは思わない。
酷評してきた人達から何を学ぶか…それは自分達が人を酷評する人間にならないという事だと思う。
同じ事をやり返したら、同じ土俵に上がって同じレベルの人間になってしまう。
怒りの感情やエネルギーは、我慢や違う形に変える努力が必要。
批判や不安、うまくいかない事も受け入れて、またそこから色々学び、少しでも強い人間となり、優しく人を助けていく存在にならないといけない。
野球が上手いだけではダメ、人の傷みが分からないと、簡単に酷評や批判をしたりする人間になってしまう。
野球界に足らないのは、そういう心や考え方の育成なのかもしれない。
色々苦しい時期もあったが、これからもこだわりや信念を曲げず、子供達を大事に育てていきたいと思う。